Chocolate Time キャラクターと語る

エッセイ集

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004.キス

ケンジとマユミ
ケンジとマユミ

 ケネスが遠い目をして言った。「わいがな、今まで見てきたラブシーンで一番好きなんは、これや。おまえらが夏、ボロ民宿で抱き合った時」

 ケンジは赤面して言った。「な、なんでこれが一番……」

「まず二人の小さな水着の日焼け跡が何ともいえへん。それにケンジがマーユの腕を押さえつけとる」

 マユミが言った。「あの時はね、ケニー、ケン兄、日焼けしすぎて背中が痛くて、あたしに抱きしめさせてくれなかったんだよ」

「そうらしな。そやけど、こうして自由を奪われるのん、好きやろ? マーユ」

「うん」マユミも頬を赤らめた。

「ほんで、何よりこのキス。たまらんなー」

 

 さて、キスのことを「接吻」と言いますが、そもそも「吻」って何?

 ウィキペディアによると、「脊椎動物の場合、測定部位の名称として目より前の部分を吻と呼ぶことになっている。」んだそうで、続けて「その点ではヒトの鼻も吻であり、そこから接吻とは鼻と鼻を擦り合わせることのはずである。」とあります。わははは。これには笑ってしまった。

 

マユミのプロフィール / ケンジのプロフィール / ケネスのプロフィール

春菜と健太郎
春菜と健太郎

 僕は、個人的にキスは大好きです。相手はオトコでもオンナでも構いません。とにかく大好きです。でも、今までに、相手からキスが上手だね、と言われたことがなくてとっても悔しいです。きっと独りよがりなのでしょうね。

 

 キスはヒト特有の愛情表現なんだそうです。唇や舌が性感帯だとすれば納得いきますね。もちろん、口同士ではなく、別の身体の部分へのキスもあります。僕は若い頃、彼女にいっぱい、身体中にキスマークをつけられて、銭湯で恥ずかしい思いをしたことがあります。でも、それと同時に、(まだ若かったので)「どうだ、いいだろー」というような自慢の気持ちもちょっとだけあったような気もします。キスマークは一日二日で消えるモノではないので、服を着ていても見える場所にあったりすると、ちょっと困ったことにはなりますね。女性の首筋にキスマークがあると、それは虫除け(本物の『虫』ではありませんよ)になる、と言いますが、どうですかね。他人の女を奪ってやる!と狙っているオトコはかえって燃え上がるかもしれません。ちなみにキスマークは医学的には『吸引性皮下出血』と言います。実に興ざめな言葉です。

 

 広い意味では、吸ったり舐めたりするのもキスだとすれば、乳首や性器への口での奉仕もキスと言えないことはない。でもやっぱりキスは口と口ですよね。うん。その方がキスらしいし、身体も熱くなる。

夏輝と修平
夏輝と修平

 キスの種類を列挙した本やサイトがあります。

 

 ソフトキス、とは、唇を触れ合わせる程度。啄(ついば)むように何度も触れ合わせるのをバードキス、と言うそうです。初々しくて可愛いですね。また、唇を閉じて触れ合わせるのをプレッシャーキス、少し開くとスタンプキスだとか。でも、これって、わざわざ、「今、スタンプキスやってるんだ。」とか意識してやったりしませんよね。キスも導入から展開、終末まであるわけで、いろいろ変化するし、バリエーションもたくさんあるわけだし。

 それでもさまざまな名前がつけられているってことは、そういうスタイルのキスが好きな人がいて、象徴的によく行われるってことなんでしょう。ハードなキスでは、映画の濃厚なラブシーンでも有名なクロスキス。口を交差させて、唇を密着させ、中で舌を絡め合ったり吸ったりするキス。この「舌を絡め合う」というキス、俗に言う「べろちゅう」は見てもやっても興奮します。

 

 最近は誤解も少なくなってきたように思いますけど、「フレンチキス」とは、こうして舌を絡め合うようなディープなキスのこと。一昔前まで日本では軽い爽やか系のキスがフレンチキスだと思われていたこともありましたが、これは間違い。フランス人を嫌っていたイギリス人が、舌を絡め合うような下品なキスをするフランス人を卑下してつけた言葉です。ま、今では立派に市民権を得たキスのスタイルですけどね。

 

 小説を書く時、「唇を重ね合った」より「舌を絡め、吸い合った」の方が温度は高い。文章では「プレッシャーキス」とかいう専門(?)用語を使っても理解してもらえないばかりか、その語感や言葉に対する先入観から、余計な説明を余儀なくされる。そうなると、不本意に文章の流れが妨げられてしまいます。結局、そんなキスの種類を表す言葉に拘ってても仕方ない。そもそもキスなんて文章表現でどう説明するか、とかいうものではなくて、いかに、キスしている二人が気持ち良くなって、燃え上がれるか、ということですからね。

ケンジとマユミ
ケンジとマユミ

 ソフトキスだけで終わるのは、恋人同士のほんのあいさつ。ただオトコであれば、それだけでは終わらないはず。だんだんと激しさを増していき、口を塞いで息が詰まり、口を離してはあはあと息を継ぎ、また塞いで、また離して、舌先から唾液が糸を引いて・・・・。言ってみれば、セックスのプロセスで、冷静から興奮への架け橋になってくれるのがキス。僕はそう思います。

 

 余談ですが、世の中にはいろんなキスがあるもんだなあ、と感心した知識を少し。

 

 靴下やセーターなどを擦り合わせて静電気を起こし、帯電した状態で舌先を触れ合わせ、電気の刺激を楽しむエレクトリックキス。いや、意味がわかんないし、やってみたいとも思わない。

 キャンディを口移ししながらついでにキスをするキャンディキス。ああ、これはいいかも。僕の小説の中に、龍と真雪がチェリーを口に含んでするキスがありましたが、これはそのバリエーション。

 相手の口全体を塞いで、口の中の空気を吸い出すエアクリーニングキス。ネーミングがいまいち。これに似たキスをやっぱり龍がやりました。大きな真雪のため息を彼が吸い込む、というキスです。

 最後に鼻を擦り合わせながら匂いを嗅ぎ合うスメルキス。お口の臭いや加齢臭、汗臭さには特に注意しなければなりませんが、これが本当の「接吻」と言えるでしょう。

2013,1,19 Simpson