Chocolate Time キャラクターと語る
エッセイ集
「秋月さん」
「ん? どうしたの? 夏輝ちゃん」
「よくニュースなんかで誰かがやらしいコトをした事件が報道される時に……」
『××××容疑者(27)は、2017年X月、○○区の公園に会社員の女性(30代)を連れ込み、植え込みで胸を触るなど、わいせつな行為をした疑いが持たれている』
『○○県警の警察官2人が、勤務中にみだらな行為をしたとして、懲戒処分を受けたと報じられた』
「とかってあるじゃないですか」
「うん」
「そもそも『わいせつ』な行為と『みだらな行為』ってどう違うんですか?」
「簡単に言えば「さわる」「脱がせる」「キスをする」などが『わいせつ』で、せ、性交があれば『みだら』なんだよ」
「何赤くなってるんですか?」
「いや……」
「じゃあ、つまり……」
「たとえばこういうコトは『わいせつな行為』なんですね?」
「夏輝ちゃん、例えばの想像図に僕を使わないでくれないかな……」
「脱がせてさわってるから立派な『わいせつ』ですよね」
「なんだよ、嬉しそうに……」
「そして……」
「これだと『みだらな行為』なんですね?」
「ちょっ! 何この想像図!」
「いや、手近なモデルだし……」
「こ、これって夏輝ちゃんは嫌がってるわけ?」
「なんでそんなこと訊くんです?」
「同意の上だとただの『みだらな行為』だけど、君が嫌がってるのなら『強制性交等罪』になるんだよ」
「つまりレイプってことですね?」
「そう。以前は『強姦罪』と言っていたけど2017年6月に交付され運用が始まったんだ」
「『強姦罪』との違いは?」
「①男性も被害者になる ②非親告罪として扱われる ③原則執行猶予がつかない」
「非親告罪?」
「つまり被害者が自ら申し出なくても起訴できるってこと」
「ということは、これは『強制性交等罪』なんですね?」
「ちょっ! やめてくれないかな、こんな想像するの!」
「男性が被害者でも『強制性交等罪』になるってことが言いたかったんですよ」
「男性警察官をレイプする女性って、そうそういないと思うけど?」
「じゃあ、同意の上ってことで『みだらな行為』」
「あのね……」
「これは『わいせつな行為』ですよね?」
「さっきからめちゃめちゃ恥ずかしいんだけど……」
「でもですよ、男性って、こんなことされたら嬉しいでしょうから、これが同意なしの『強制わいせつ』になることって少なそうですね」
「ま、まあね……」
「この段階でも『わいせつな行為』ですよね?」
「いや、これは『みだらな行為』扱いだね」
「え? そうなんですか?」
「さっきの『強制性交等罪』に倣えば、性器同士の結合だけじゃなくて口や肛門に入れたり入れられたりするのも『性交等』として扱われるんだよ」
「秋月さんたら、恥ずかしいコトバ連発しちゃって……」
「説明してやってるんだよっ!」
「このままじゃ収まらないでしょうから出させてあげましょう。うふふ……」
「そ、そんなに僕を凌辱したいの? 君は」
「想像は自由ですから」
「でも、愛し合ってる二人がこうやってキスしてるだけならニュースになることはありませんよね?」
「誰が愛し合ってるって?」
「いや、手近なモデルだし……」
「君も僕も既婚者だろ? これはこれでW不倫、しかも警察署の中だから十分ニュースになるじゃないか」
「2017年の秋に実際ありましたね、こういう事件」
既婚者の男性警部(39)と部下で未婚の女性巡査(30)は不倫関係にあり、当直勤務中に武道場更衣室で性行為に及んだそうだ。男性警部は減給10分の1(3カ月)に、女性巡査は本部長訓戒の処分を受けた。
「女性も既婚者だったらやっぱり減給10分の1(3カ月)になってたんでしょうねぇ」
「男性の方は警部でしょ? 署内での身分は下になるから、たとえ同じ既婚者だとしても女性巡査が同じ処分を受けるかどうかは微妙だね」
「ラブホでなら遠慮なくやれたのに……よっぽど我慢できなかったんでしょうね、この二人」
「だから、なんで僕と君がハダカで抱き合ってキスを……」
「秋月さん耳まで真っ赤ですよ? 想像して昂奮してきました?」
「ばっ、ばかな……」
「エッチは誰にも気兼ねなくやんなきゃ。ねえ、秋月巡査長」
「役職つけて呼ぶと、署内でやってるみたいだからやめてよね」
「で、服を着る前に同僚たちに見つかってしまえば、『公然わいせつ』ですよね」
「な、なんでここまできて僕だけ一人?」
「あたし、ダッシュで逃げました(笑)」
「勉強になりました秋月巡査長」
「実は知ってて訊いたんでしょ?」
「あ、湯飲みが空っぽ。お茶のお代わりついであげますね」
2017,12,9 Simpson
《Information》
日向 夏輝は工業高校卒業後警察官採用試験に現役で合格します。高卒の場合、警察官に採用が決まると警察学校に入って21か月間の『採用時教養期間』を過ごします。第一段階は座学中心の『初任科教養』、次が交番での『職場実習』、第三段階は再度学校に戻り初任補修科生としての勉強や訓練、そして最後の第四段階『実戦実習』という研修を積んでようやく一人前の警察官になるというわけです。
その第四段階の現場での『実戦実習』で秋月は夏輝の指導教官を任ぜられました。当時25歳の秋月 遼は巡査長という立場で夏輝にマンツーマンでの指導を行い、彼女が立派な警察官になる手助けをしました。
20歳になったばかりの夏輝はこの紳士的で真面目な巡査長の下でとても意義のある実習を行うことができました。その後二人は揃って生活安全課に配属され、すずかけ町二丁目の交番に勤務することになります。